前回のお話
前回はゴールドウイン三浦務さんによるUTMF開催直前ワークショップの前半部分をまとめました。内容は「選手の責任」と「自然保護に関するルール」「開催時期変更の理由、気温変化への対応」の部分です。詳しくはこちらからお読みください。今回の内容
今回はいよいよワークショップの核心部分である「必携装備品」についての三浦さんの解説部分です。後半にはNorth Faceのスタッフの方で昨年のUTMFを90位あたりで完走されたエリートランナーと、46時間の制限時間ぎりぎりで完走されたいわゆる一般ランナーのお二人によるアドバイスや参加者とのQ&Aが行われました。その部分についても簡単ですがまとめてあります。それでは三浦さんによる装備品の解説まとめ、はじめます。
9.装備について-必携品(装備といて必ず携行するもの)
個別の説明に入る前にしっかり読んでもらいたいのは以下の注意書きです。
必携品ウェアの保温性、防水性などのレベルは、選手自身の責任で決定してください。事前にそれらを着用して氷点下気温の高山、大雨の中での長時間に及ぶランニングなどを体験し、それらのウェアが本当に自分のカラダを守ってくれるのか否かを知っておきましょう。選手自身が責任をもって認め、届け出たウェアを大会本部はその選手の必携ウェアと判断します。
個別の必携品については以下の通りです。
1.コースマップ(大会公式サイトで公開される「詳細図」を必ずダウンロードしてください)。(※1)
※1 スマートフォンにダウンロードした詳細図は、バッテリー切れで見ることができない場合は『地図を持っていない』とみなされます、ご注意ください。
2.エントリーの際に番号を届け出た携帯電話。大会本部の電話番号(ナンバーカードに明記してあります)を登録し、番号非通知にせず十分に充電しておくこと。レース前、レース中に大会本部よりこの携帯電話に緊急連絡をすることがあります。
3.携帯コップ(150cc以上)。エイドステーションに紙コップの用意はありません。
⇒特に説明なし。(ちなみに私が持っていく携帯コップはSea to Summit社のXMugです。)4.1リットル以上の水(スタート時および各エイドステーション出発時)
⇒特に説明なし。(私はUltimate Directionの初代Scott Jurekモデルで行こうと思っています。先日試しにレインウェアや保温のための長袖シャツなどをいれたところそれだけでパンパンに・・・。もうちょっと荷物のダイエットさせないといけないかもです。)5.食料
⇒ジェルでもパワーバー、チョコ、お饅頭など自分にあったものでOKです。計算上は各エイドステーションで用意されるものを食べ続ければカロリー計算上は完走できることになっている。ただし。山中では何が起こるかわからないので、トラブルに備えて行動食は必携です。6.ライト2個、それぞれの予備電池。低温では電池の寿命が短くなります。
⇒特に説明なし。(私は先日の六甲縦走キャノンボールランでの痛い反省を踏まえ、高額なお買いものとなってしまいましたが、評判が高く明るさに定評のあるPetzl社のNaoヘッドランプを使用することにしました!あと、手持ちライトとしてGENTOS 閃 325も持っていきます。これでもう迷わない?! )(PetzlのNao。ヘッデン市場最強?!) (手持ちライト。明るさ150ルーメン!)
7.サバイバルブランケット(130cm以上×200cm以上)。
⇒この「130cm以上×200cm以上」という規格についてですが、一般的なアウトドアショップで販売しているサバイバルブランケットはほとんどこのサイズ以上のものばかりですので、サイズに関してはあまり気にしなくても大丈夫です。サバイバルブランケットは寝る時などの保温のために使用するだけではなく、走る時にも使えます。UTMBの時にはジャケットの下にサバイバルブランケットを着て走る選手を結構見かけました。特に夜、寒くなってどうしようもない時などにはこのことを思い出してください。(私がアートスポーツさんで購入したサバイバルブランケットはハイマウントのサバイバルシートです。)
8.ホイッスル
⇒最近ではザックやパックに備え付けられているものも多いですが、その程度のホイッスルで充分です。
9.テーピング用テープ(80cm以上×3cm以上)(※2)
※2 骨折などケガの救急処置のためだけでなく、ザックの紐(ストラップ)など、装備が壊れたときの補修など、多くの用途にも使える強いテープ。
10.携帯トイレ(※3)
※3 使用した場合は次のエイドステーションで交換可能
11.保温のためのフリースなどの長袖シャツ。綿素材は認められません。(※4)
※4 保温のための上半身の衣料は=「暖かい空気の層」を作ることができる起毛したミッドウエアと称されるフリースやウール、薄手のダウンなどのことです。薄手のアンダーウェアは認められません。⇒通常の長袖シャツではだめで、North Faceの製品で言いますとPowerDry Grid Jacket程度のいわゆるミッドウェアでなければなりません。(個人的なポイントですが、UTMFはレインウェア上下に加えてこの保温のための長袖シャツもザックに入れて運ばないといけないため、あまり厚手のものだとそれだけでスペースを取ってしまいますので保温性があってかつ軽いものを選んだほうがいいと思います。)
12.保温のための足首までを覆うズボンあるいはタイツ。または膝までを覆うタイツと膝までを覆うハイソックスの組み合わせ。いずれも綿素材は認められません。(※5)
※5 保温のための下半身衣料は=A.足首までを覆うズボン、B.同じ足首までを覆うタイツ、C.丈の短いタイツとハイソックスのことです。⇒基本は肌を外に出さないための対策です。Cの「丈の短いタイツ」とは膝下まである七分丈のタイツを指し、それとハイソックスを組み合わせると結局は足全体をタイツとソックスで覆うことになります。膝が隠れていることが一つのポイントです。タイツが一番無難な選択肢だと思います。いわゆる鏑木スタイルで身軽に走りたいという方もいらっしゃるとは思いますが、昨年優勝した原良和選手もロングタイツでしたし、100位以内を目指す!とかでなければ保温対策にもなりますのでタイツを使用するのがいいかと思います。
13.保温のための手袋、耳までを隠す帽子(※6)
※6 ウール、ポリエステル製ニットキャップなどのこと。キャップとヘッドバンド、またはジャケットのフード、筒状のバフは認められません。⇒手袋はいいとして、帽子についてもここまで規定しているのは、たとえ吹雪になったとしてもレースを止めたくないという主催者の気持ちがあるからです。2010年のUTMBでは、大雨の影響で30km地点コンバルでレースが中止となりました。中止になって泣き崩れる鏑木選手、横山峰弘選手の姿をテレビを通じてご覧になった方も多いと思います。1年間かけて準備してきた選手を止めることなく走らせたい、そのために帽子についてもしっかりとしたものを用意してもらいたいと考えています。
14.雨天に備えてフードつきレインジャケットとレインパンツ。どちらも〈ゴアテックス〉あるいはそれと同等の防水、透湿機能を持ち、縫い目をシームテープで防水加工してあるもの。(11.12.との兼用はできません)
15.ファーストエイドキット(絆創膏、消毒薬など)
⇒特に説明なし。市販のセットになっているものでもいいですし、必要なものを自分でジップロックなどにいれてコンパクトにまとめるやり方でもいいかと思います。16.保険証(コピー不可)
17.配布されるナンバーカード、ICチップ(両足につけること)
⇒今年からの変更点ですが、ナンバーカードは折りたたまず、必ず上半身部分に見えるように貼り付けてください。昨年までは米国のトレラン大会でよくあるような、数字の部分だけを見えるように折りたたみ、パンツに安全ピンで付ける選手も多かったのですが、今年からは折りたたむことはNGです。その理由として、ICチップだけでなくスタッフがランナーのナンバーカードを見て記録を取るポイントが数か所あるため、チェックする人にとって見えやすくするということもありますし、もし万が一ケガなどをした際、救護本部の電話番号がナンバーカードには明記されているのですぐに電話することもできますし、選手の名前が明記されているため、選手が意識を失うような状況になった場合でも、ドクターが名前を呼ぶことで意識を取り戻しやすくなります。そういった緊急の場合だけではなく、名前が見えると応援してくれる人から名前を呼んでもらいやすくなり、元気をもらえます。
シャツは着替えたり、上からジャケットを着ると見えなくなることもありますので、おすすめはナンバーをとめて着脱が容易なベルトです。(私はNathan社のRace Number Beltを使用する予定です。)
18.配布されるフラッシュライト(夜間走行の車輌から認識されやすいよう、ザックなどにつけること)
⇒エイドステーションの前後では市街地を通るところが何か所もありますので安全対策として必ずザックやキャップ、ライトの後ろなど車から見えるところに付けるようにしてください。※必携品とは最低限の装備のことです。厳しいレース環境で、二昼夜(STYは一昼夜)走り続けることを認識し、自らの安全と健全な体調を確保するために、さらに必要と思われる装備を加えてください。(スタート時に半袖、短パンであってもかまいませんが、必ず必携品を携行してください。)
特に勧める携帯品
コンパス、熊鈴(※)、着替え、日焼け止め、ワセリン、筆記用具、現金※熊鈴は昼夜を問わず、近隣住民にとって非常に不愉快な騒音です。山岳区間以外では取り外すなど鳴らないように工夫してください。
⇒熊鈴は近隣住民からの苦情が相次いだこともあり、必須装備品からは外しましたが、熊が出なくなったというわけではありません。熊に出会う可能性はゼロではありませんので、心配な方はやはり今年も熊鈴を携帯してください。ただし、市街地に来たら音を出さないようにしてください。
(最近ではワンタッチで消音できる熊鈴も多くありますので、そちらをご活用ください。私はこのハイマウントの消音ケース付きのカウベルを持っていきます。)
10. ドロップバッグについて
1.STYにはありません。2.UTMFの選手は、レース途中の「A7 富士山こどもの国」で、スタート前に預けた荷物(ドロップバッグ)を受け取ることができます。
3.そこまでの区間で使い終わった用具などをドロップバッグに戻すこともできます。
4.レース終了後、ドロップバッグはフィニッシュの河口湖八木崎公園に運ばれます。
⇒UTMFに出場される方は是非積極的にドロップバックを活用してください。レースの中間地点である「A7 富士山こどもの国」でドロップバッグを受け取れますので、天気予報なども考慮に入れて、着替えや予備のシューズなど用意しておくとよいと思われます。自分で運ぶわけではないので必要と思われるものはある程度多くなっても預けてしまえばいいと思います。例として、最初は薄手のジャケットで走り、2晩目の寒くなるところでドロップバックに厚手のジャケットを追加するなどがあります。後半の天子山地を乗り切るためにドロップバックは重要なポイントになります。
着替え終わったウェアなどもそこで預けられ、ゴール後受け取ることができます。
■上記1~18にあげられた必携装備品は必要最低限の装備ですので、必ず自分自身で足りないものを足すようにしてください。
プライベートサポートについて
サポートクルーの重要性はよく言われていますが、サポートクルーをつけることができる選手は是非つけてください。ただし、以下のエイドはサポートNGです。【サポートをつけることができないエイドステーション】
- A1 富士吉田
- A2 二十曲峠
- W1 粟倉
- A11 鳴沢
Q&A
三浦さんの解説後、UTMFを完走した2名のNorth Faceスタッフの方も交え、参加者との質疑応答が行われました。
A:残念ながら関門時間までに、そのエイドを出なければ関門クリアとはみなされません。今回は制限時間が48時間から46時間と2時間少なくなっている関係もあります。西富士中学校までは1回目のUTMFと同じコースですが西富士から先のコースが今回変更となっていて距離が伸びているので制限時間が厳しくなっています。また、「A5 富士山御殿場口太郎坊~A6水ヶ塚公園」間は富士山スカイラインは舗装道となっており、ここは早朝までに通る必要があります。4月26日(土)はゴールデンウィークの初日にあたり、レジャー施設もこの日からオープンするところも多く、観光客が押し寄せる前に通過する必要があります。
コース的にも後半には天子山地が待っており、かなり厳しいコースであり、後半に使える時間を前半で稼ぐ必要もあり、関門が厳しくなっています。
Q:補給食についてアドバイスはありますか?
A:エイドステーションには米の補給食が少ないので、サポートを付けることができるのであれば米を持ってきてもらうのがおすすめです。おにぎりはエネルギーになるまで2時間近くかかりますが腹持ちもいいのでドロップバックにおにぎりをいれておくのもよいでしょう。
鏑木選手は130キロを過ぎるとジェルが喉を通らなくなることが多く、フルーツなども試したのですが、最終的には「お粥」に落ち着きました。UTMBなど海外の大会ではアルファ米を持っていき、現地でお湯で戻して塩と醤油で味付けして食べさせていました。100マイルのレースでは後半モチベーションを維持するのが難しいので、「次のエイドに行けばお粥が食べられる!」というのが鏑木選手のモチベーションになっていました。
Q:トイレですが西富士中学校はシューズを脱ぐ必要があると聞いたのですが?
A:はい。基本はそのまま入れますが、西富士中学校は普段は学校であり、UTMFのために特別に場所を提供していただいていますのでシューズは脱いでご利用ください。
Q:グローブは薄手のものだと厳しいですか?
A:2晩目が厳しいので、ドロップバッグに厚手のグローブをいれておくといいと思います。
以上になります。私含め特に初めてUTMFに挑戦する方の参考になれば・・・と思いまとめました。残り2週間ちょっとですが、体調管理、ケガには十分気をつけて過ごしていきましょう!とりあえず私は今週末のハセツネ30Kで張り切りすぎてケガしないように注意します・・・。
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